そして、夏休みに入ってから二日が過ぎた日。 
蔵島から連絡が入った……偽手紙で、矢澤を呼び出しているという。 
その矢澤を、拉致して欲しいという連絡だ。 
 
……俺は急いで、矢澤が呼び出されている場所に向かった。 
 
 
公園
 
 
蔵島から指示された公園に身を潜め、矢澤を待つ。 
すっかり夜も更け、辺りには人気はない。 
 
やがて矢澤が、公園にやってきた……とりあえずは手紙で指示された通り、一人で来たように見える。 
 
| 瑞 恵: | 
「……あの〜……誰か、いませんか……?」 | 
 
 
 
不安そうな表情を浮かべ、辺りを見渡しながら、矢澤は暗闇に問いかけている。 
他に誰か連れてきていないか確認するため、俺はしばらく矢澤の様子を窺った。 
 
騒ぎの渦中にある家に戻らず、寮に残っていたのだろう……矢澤は、制服姿だった。 
柔らかそうな白い肌と、ほどよく膨らんだ胸……制服に包まれた矢澤の身体を、舐めるように見つめる 
あの肌を……あの胸を……俺の手で蹂躙できるのかと思うと、身震いがしてくる。 
 
| 瑞 恵: | 
「あの〜……本当に誰か……いないんですか?」 | 
 
  
矢澤は深い溜め息をついて、諦めたように踵を返す。 
それを見計らい、俺は矢澤に近づいた。 
 
| 主人公: | 
「やぁ、矢澤君」 | 
 
| 瑞 恵: | 
「せ、先生……? 何で、ここに……」 | 
 
  
矢澤は怯えたように、俺を見つめている。 
ああ、この目だ……この目が、俺を高揚させる…… 
 
| 瑞 恵: | 
「先生……何で? どうして、こんな所にいるんですか? ……まさか!」 | 
 
| 主人公: | 
「?」 | 
 
| 瑞 恵: | 
「先生が……先生が、あのスキャンダルを流したの……? 
ど、どうして……? どうしてですか……」 | 
 
 
 
矢澤は俺の腕にすがりついて、困惑の表情を浮かべている。 
何の事かはわからないが、呼び出した手紙の内容はスキャンダル絡みらしい。 
しかし、ここで騒がれるわけにはいかない…… 
 
 
俺は手早く矢澤に組み付くと、用意していたクロロフォルムを染みこませた布で、その鼻と口を覆った。 
 
 
身を離そうともがく矢澤を押さえつけ、クロロフォルムを嗅がせる。 
これを用意した蔵島も言っていたが、嗅がせる量には注意しなければならない。 
 
| 瑞 恵: | 
「んむぅ!……ううっ!……む……ううぅ……」 | 
 
 
 
やがて矢澤の身体から力が抜け、膝から崩れてゆく。 
俺は、倒れそうになったその身体を抱き留めて支えながら、矢澤の様子を見る。 
 
とりあえずは、気を失っているだけのようだ……俺は、安堵の溜め息をついた。 
 
俺の腕の中で、くたりと崩れている矢澤…… 
その柔らかい身体の感触と重みに、ふと自分がしている事を意識する。 
 
俺はもう、引き返せない所まで来ている……その事実が、腕の中にある重み以上に感じられた。
 
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